扉|水流苑まち(つるぞの・まち)|note
高校の裏門をくぐって、住宅の立ち並ぶ角を右に一回、左に一回曲がる。 待ち合わせ場所の駐車場の前には、すでに知樹(ともき)くんの姿があった。彼は緑色に塗られたフェンスに背中を預け、右手で文庫本を開いている。その手に白い包帯が巻かれているのを見て、心臓が縮こまるような感覚をおぼえた。 今日、昼休憩の時に、知樹くんと同じクラスにいる友だちから変な噂を聞いた。 今朝、クラスメイトの一人が顔に派手な傷を作って登校してきた。目の周りに痣ができて唇の端が切れていたことから、誰かに殴られたということは一目瞭然だったという。大怪我をしているわけでもないし、ただの喧嘩ならそう珍しいことでもないの
note(ノート)
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